21世紀に蘇ったシャーロック・ホームズ

私は子供の頃からシャーロック・ホームズの大ファンでした。

小学生の頃買ってもらった「少年少女世界名作文学大全集」の中でも特にお気に入りで、繰り返し読んだことを思い出します。

ホームズは言わずと知れた天才的な名探偵。「ホームズ潭」はヴィクトリア時代のイギリスでコナン・ドイルの筆により誕生し、現在では聖書と並び、数多くの言語に翻訳されている物語の一つとしても知られています。

コナン・ドイルによる原作はマニア(シャーロッキアン)の間では「聖典」と呼ばれており、その物語中随所に矛盾する記述が見られることからそれをネタにしたパロディ作品も数多く作られました。

聖典の中での矛盾として有名な例のひとつに、ホームズの相棒であるドクター・ワトソンが軍医時代怪我をした箇所が「肩」だという記述が物語中出てくるのに、別の短編では「古傷で脚を引きずって歩く」と書かれている、というのがあります。

そしてそうした矛盾した記述を実に上手く取り入れた海外ドラマを私は知っています。

それはホームズの故郷イギリスBBCが制作したドラマシリーズ「シャーロック」です。

これはホームズ物のドラマとしては実に画期的な作品でした。何故なら従来のホームズドラマはその殆どが原作通りビクトリア時代を舞台にしたものだったのですが、このドラマでは現代のイギリスが舞台。

「二輪馬車とほのかな灯りと電報の時代」を「タクシーと地下鉄とスマホとPCの時代」に移し替え、そこでホームズを活躍させるという力技を見せたドラマだったからです。

更にこれまでホームズ物語の中では「ホームズ」「ワトソン」とお互いを呼び合っていた二人が、このドラマでは「シャーロック」「ジョン」とファーストネームで呼び合っています。この当たりは如何にも現代風です。

自らを「高機能社会不適応者」と呼ぶ変人探偵を演じるのはベネディクト・カンバーバッチ。最近ロードショウ公開された「スタートレック」で印象に残る悪役を演じたことでも注目されています。

不自然な程逆三角形で長い面差しに、左右離れ過ぎと思える目が特徴的な彼は、決して典型的な美男子ではありません。

しかしその長い手足と低くて良く響く声が醸し出す独特の色気は、世界中に熱狂的な女性フォロワーを生んだと言われています。

そしてもともと舞台俳優だった彼の人気を決定的にしたのがこの「シャーロック」でした。

これまでのところ第2シリーズ(全6話)まで放送され、現在第3シリーズが放映されるのを今か今かと首を長くして待っているところなのですが、なかなか完成の知らせが聞こえてこないのでもどかしい思いをしています。

先にこのドラマシリーズは21世紀の現代を舞台にしていると言いました。

でも時代が現代になっても、呼び方が「シャーロック」に変わっても、ホームズの本質はほぼ変わっていないことがこのドラマを一層面白くしていると思います。

例を挙げると例えば原作のホームズはヘビースモーカーでしたが、現代のロンドンでは禁煙が一般的なため、変わりに腕にニコチンパッチを貼って辛さをしのいでいるとか、ひょろっとした見かけに似合わず、実はボクシングもプロ級だったホームズと同じく、シャーロックも突然襲って来た暴漢に対し、圧倒的な強さで立ち向かい見事にノックアウト。

その後何事もなかったかのように淡々と相棒のジョンと会話をする、とか、本家本元のホームズ潭を巧みに現代のドラマへと消化しています。

普通に見ても十分面白い本作ですが、マニアックなファンは原作にたくさん登場する「語られざる事件」(事件名だけ書かれてその内容について触れられていない)が「どこそこで使われていた!」と発見して楽しむなど、見るたびに新しい発見があって本当に奥の深い作品だと感じています。「一作で何度でも美味しい」そんなドラマです。

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